体験談

1人目が鉗子分娩でした

T.R.

師長: Tさんは当院で2人出産されました。2人目のお産から少し時間は経っていますが、記憶を呼び戻しながらお話して頂きたいと思います。まず、1人目のお産からですが、当院で出産しようと思ったきっかけがあればお願いします。

Tさん:  私の姉がここで出産して、その時ヨーガに通っていたのですが、私もヨーガをやってみたいと思ってここに決めました。

師長: 妊娠中にヨーガをやってみたいというのがあったんですね。

Tさん: ありました。

師長: どうしてヨーガをしてみたいと思ったんですか?

Tさん:  姉が通っていたし、本とかにも載っていたので。

師長: ちなみにお姉さんはどんなお産でしたか?

Tさん:  1人目が鉗子分娩、2人目は普通でした。

師長: お姉さんは1人目鉗子分娩になって、何か感想言われていましたか?

Tさん: しんどかったとは言っていましたが、具体的にはきいていません。

師長: そうですか。では、Tさんのお話になりますが、私の記憶では1人目の時、妊娠の初期からマタニティー・ヨーガの教室に毎回と言っていい程来られていていたと思います。当院では、先生が、個別に妊娠初期から安産指導をしていて、特に1人目は厳しく指導しています。Tさんも多分最初からマタニティー・ヨーガも含めて安産指導があったと思いますが、具体的に何と言われたか覚えてますか?

Tさん: 動きなさい、散歩しなさいと言われました。

師長: 具体的にどんな事をしましたか?

Tさん: 1日2時間くらい散歩して、夜寝る前にヨーガを1時間くらいしていました。

師長: ヨーガというのは、教室で覚えてですか?

Tさん: そうです。教室でしていたのを、最初から最後まで覚えて1時間していました。

師長: すごいですね。

Tさん: もう何回もしました。

師長: ちょっと変な質問ですが、それは何のためにやってましたか?
どうして、散歩やヨーガをしようと思ったのですか?

Tさん: する事でお産が違うのかなって思ったし、体力も付いた方がいいかなって思ってしました。

師長: ちょっと1人目の時のカルテを見直していたんですが、先生が所々外来の健診時に厳しいですよ、とか、帝王切開率50%とか書いてあるんですが、覚えてますか?

Tさん: はい、結構厳しかったです。

師長: 先生が20週、6ヶ月の頃には帝王切開率70%って書いてあるので、かなり厳しく安産指導されたのでしょうね。それでTさんも頑張ったんでしょうね。

Tさん: はい。帝王切開は恐いし、絶対したくないと思いました。

師長: それで、一生懸命頑張ったためか30週頃、一度切迫早産という事で入院もされたようですが、一生懸命動いて、そういうふうにおなかが張ったら一時お休みしてというようなかたちで、先生も安産に向けて状態を見ながらコントロールをしていたようです。
実際、陣痛が始まったのは38週と5日、予定日までに陣痛がきてくれたので良かったのではないかと思います。
5時過ぎに入院されて産まれたのが8時54分、初産婦さんで、わずか4時間足らずでお産になりました。だから経過としては早かったんですね。それもTさんが先生の言われた通りに動いた結果だろうと思います。
経過が早かったのでよくわらなかったかもしれませんが、陣痛の時、これをしたら楽になったとか、これをしてもらったら良かったとかいう事はありましたか?

Tさん: 腰を押してもらったら楽でした。そしてベッドにつけてもらった綱を持ってグッていきめたのが良かったです。

師長: 分娩台ではなくて、自分の好きなように動けたというのが良かったのですね。

Tさん: はい。

師長: お姉さんが鉗子分娩だったと言われてましたが、実はTさんも鉗子分娩になりました。みなさん、鉗子分娩ってきいた事ありますか?みなさんあまりきいた事が無いようですね。
吸引分娩は赤ちゃんの頭の先にカップをつけて引圧で引っ張りますが、鉗子分娩は赤ちゃんの頭の側頭を器械で挟んで先生が引っ張ります。県内で鉗子分娩が出来るのは松山でおひとり、それと先生だけです。吸引分娩で困難な時は即帝王切開ではなく、もうひとつ手段があると思ってください。

Tさんの場合は9cmくらいまでスムーズにお産が進んだのですが、その頃になると急に赤ちゃんの心音が陣痛の時に下がり始めました。赤ちゃんも狭い産道で圧迫されるので苦しくなる場合があり、その程度によっては早く出してあげないといけない場合があります。それで急遽鉗子分娩をしました。鉗子分娩でスムーズに産む事が出来た1つの理由としてはご本人が妊娠中、一生懸命体操して骨盤の出口を緩めておいた結果だと思います。
以前、妊娠中の先生の指導にも関わらず何もしなかった方がお産になり、赤ちゃんの頭が見えているのに吸引も鉗子もだめで帝王切開になった方が2人います。この方は2人目の妊娠の時は一生懸命スクワットをして、むしろ安産で産む事が出来ました。骨盤底を広げるという事はとても大切です。
Tさんもそのような事をしていなかったら、先生が妊娠中に帝王切開率を書かれていた程なので厳しかったかもしれませんね。

Tさん: はい、帝王切開になっていたと思います。動いていて良かった。

師長: 今回、妊娠した時、また鉗子分娩などのイメージが湧いてきましたか?

Tさん: はい、あるかな……とは思いました。

師長: 1人目鉗子分娩になると、2人目もしんどいお産になるかなって妊娠した時点で不安に思う方もいらっしゃると思いますが、Tさんの場合は、どうでしたか?

Tさん: そうですね、不安はあったと思いますが、先生の言われた事はしようと思って、動いていました。でも、散歩とかは1人目みたいには出来なくて、マタニティー・ヨーガには参加出来る時には行くようにしていました。

師長: カルテを見ての想像ですが、今回の方がしんどかった?

Tさん: しんどかった。時間がかかったし、痛みが強かった気がしました。

師長: 1人目のお産では入院時赤ちゃんの頭がSt-3まで下がっていました。数字だけ覚えておいてください。でも今回は-5。2cm赤ちゃんの頭が高かったようです。そのため、お産の時間がかかってしまったんでしょうね。先ほど、前回ほど散歩も出来なかったという事で、分娩開始のスタートの状態が違っていたのかもしれないですね。
先生は日頃から1人目のお産を大事にしなさい、と言われています。1人目をもし帝王切開してしまったら、2人目も3人目もまず帝王切開になってしまいます。1人目をちゃんとお産していたら、次は多少時間がかかっても下から産めると思います。今日は初産婦の方が多くいらっしゃいますが、しっかり安産体操をして頂きたいと思います。
今回は前回に比べて少し時間がかかった分、色々な事をして頂いたり、さまざまな体位を取って頂いたりしたと思いますが、どれが楽とか、しんどいとかありましたか?陣痛にあわせてバランスボールにも乗ったりしましたよね。

Tさん: バランスボールは、陣痛が弱い時一生懸命しました。お産が早く進んで欲しかったから……。あと、馬のようなイスにも座ってマッサージしてもらいました。

師長: そうですね。馬のようなイスに前にもたれるようにして、腰のツボを押したり、マッサージしたりすると痛みが紛れて楽に感じる方も多いようです。
前回は横向きで綱を持つのが楽だったそうですが、今回も四つん這いになったり、横向きで綱を持ったりしてお部屋の方で自然分娩になりました。いきみが出てきた時、こんな格好が力が入りやすいとかわかりましたか?

Tさん: 四つん這いは無理でした。今回を最後に上向きになったけど、何か、足の支えになるのがあった方が良くて、看護師さんが支えてくれていました。

師長: 最近、直前に上を向いてお産する方が多くなった気がするんですが、分娩台も上を向きます。でも、分娩台はまず脚が固定されます。そして決まったスペースで持つところも決まってます。でもフリースタイルの上向きというのはそうではなくて、脚も具合の良いところに置けるし、脚の支えが必要な時はスタッフの肩とかで脚を支えて、スタッフの方でもいい具合を見つけて踏ん張って頂いたりしています。脚の開き方も、分娩台はここまで開きなさいというのがありますが、フリースタイルは自分の良いように調節出来ます。ここが分娩台の上向きとフリースタイルの上向きの違いです。横向きでも片足を上げる時がありますが、その時も自分のいい角度に上げてそれをスタッフが介助すると思ってください。
Tさんは1人目が鉗子分娩だったので分娩室のマットの上でお産になったと思いますが、2人目のお産はあらかじめこんな格好でお産しようとかは考えていましたか?

Tさん: 四つん這いかなって思っていたけど、実際は違っていました。

師長: よくフリースタイルの質問の中でどんな格好がいいかわからないという方がいますが、そんな事は考える必要はないです。
それはその時にならないとわからないので、その時に動きたいように動いたらいいし、それにあわせてスタッフが介助していきます。
そして、なるべく気持ちが良いと思う事をして貰ってください。
反対にこれはしたくないとかしんどいとか思えば遠慮なく言って下さい。
ところで、鉗子分娩になると、傷も多少深くなったりして、お産に対して恐怖感を抱く方もいますが、Tさんは2人目の妊娠に関して、そういった感情はありましたか?

Tさん: いや……、1人目の方が楽というか、産んだ後も身体はしんどくなかったです。

師長: それはどうしてでしょう?

Tさん: 姉はしんどそうにしてましたが、私は大丈夫でした。ヨーガも早くからしていたし、散歩も頑張ってしていたので、体力があったんだと思います。

師長: でも考えたら、妊娠初期から先生の厳しい安産指導があって頑張っても鉗子分娩になったという事は、妊娠中の安産指導が無くて何もせず、分娩台でのお産だったらきっと帝王切開になっていたかなって個人的には思うんですが。

Tさん: 私もそう思います。

師長: 初めが帝王切開だったら今回も帝王切開だと思うので、2回おなかを切っていた事になりますね。それが、先生がよく言われていますが、1人目のお産を大事にしなさい、という事なんです。自分の希望するお産はどういったものか、そのためにはどうしたらいいのか、どういった指導、援助がなされるのか、そういった事を色々な人に聞いたり、調べたりしてまず情報を集め、それから自分の考えに沿って病院選びをして頂きたいと思います。
一生の内でお産の経験は数回だと思いますので、心に残るような、そして良い育児のスタートが切れるようにこちらも出来る限りのケアはさせて頂きたいと思いますので、みなさんも不安な事、気になる事、または希望があれば遠慮なくスタッフの申し出てください。
最後にみなさんにアドバイスがあればお願いします。

Tさん: 先生が安産指導してくれるので、それを目標に頑張ったらいいと思います。私は、散歩は3時間と言われていましたが、2時間くらいしか出来ませんでした。でもお産も早かったし、終わってからも体力があったので楽でした。ヨーガも友達とか出来て、同じような環境の人が周りにいるので、色んな話をきけたりしてためになりました。

師長: そうですね。ヨーガの教室では横の繋がりが出来て色々な情報交換が出来て、お互い励ましあったり、悩みを共感しあったりして良いようですので、みなさんも色々な行事に参加してみて下さいね。

←前のページに戻る