体験談

吉村先生との出会いがあったお産

N.Y.

「妊婦がお産の主役、納得のいくお産をしたい」
私がこちらの病院を選んだのは、この1件の新聞投稿に出会った事がきっかけでした。この新聞記事はナチュラルバースでお産をされた方が、これからお産をする女性や家族に向けて書かれたもので、日頃から将来の事を気にかけてくれていた母が、私のためにこの記事をずっと持っていてくれたのです。ただ、その病院がいったいどこなのか記事には載っておらず、ネットで色々調べた末、日浅産婦人科に辿り着きました。

初めて先生にお会いし、母と2人でお話を聞かせてもらった時は、母も今まで思っていた不安が消え、何もわからなかった私も自然出産についての知識を得られたとともに、自分も健全なお産をしたい、ここならそれが出来そうだと、とても心強く嬉しく思いました。ただ名古屋に転勤になっていたので、あちらではどこの病院に行ったら良いか、自己管理はちゃんと出来るか、それがとても不安でした。特に病院選びには気を遣いました。幸いにも私の住んでいるところから高速で30~40分かかるのですが、自然出産で有名な岡崎市にある吉村医院を日浅先生に紹介して頂き、受診しました。

初めて主人と行った時の印象は今でも忘れません。「どんな生活送ってんの?あんた、食いすぎ。食っちゃ寝してちゃだめよ。運動しなさい!お菓子や脂っこいものばかり食べずに菜っ葉を食べなさい!昔の人は妊娠してもみんな動いてたんです。ご飯もお風呂も薪でわかしてたんだから。お産なんて自然なもの。馬や牛が分娩台でお産しますか?ラマーズ方使いますか?みんな自分の力で自然にお産するんです。あなたも自分の力で生みたいでしょう。厳しい事を言うようだけど、あなたたち2人の幸せを思うからこそ言ってるんですよ」
思えば引っ越して間もない頃、つわりが苦しいのと、まだ生活にも慣れない事から、私自身床に伏せがちでした。主人も気を遣って家事についても全面的に協力してくれていたのです。それ以来、規則正しい生活はもちろんの事、食事にも気をつけ、スクワットやヨーガなど運動もかかさないようにしました。休みの日には主人と2人で散歩もしました。

しかしやはり何分遠い事もあり、自分1人で行きづらい事や、何かの時のために、近くの病院も受診する事にしました。当日その先生に言われた事は、「おなかの張りがひどい。動けばいいというものじゃない。赤ちゃんも下がってきているし、何かあった時には子供には責任があるのだから。母親として自覚しないと……今のままでは早産になる可能性がある」との事。そしてその日に張り止めのお薬を出されたのです。診察もせずおなかを触っただけなのにまさか……とは思いましたが、お医者さんが言われる事だし、状況が変わってしまったのではとすごく不安になりました。でも吉村先生には、今おなかが張るのは良い事だと言われていたし、ちょうどその2週間前の診察でも、まだまだ運動が足りない!と指導をされたばかりだったのです。 
以前、日浅先生に「この先、他の病院で、安静にしなさいとか、薬を出される事があるかもしれない。でも、もしそういうふうな状況があれば吉村先生か私に相談しなさい」と言われていた事を思い出しました。電話で母に相談し、頂いたお薬は飲まずすぐ今治に帰り、その事を先生に話しました。「早産なんてとんでもない!じゃんじゃか動きなさい!」と以前と同じ事を言われました。
名古屋に帰ってからは、主人とも相談し、「遠くても月に1回の事だし、受診の日は仕事も休みをとって車を出すから、最後まで信用出来る病院で見てもらおうよ」と言われ、それからはずっと吉村先生に見て頂く事にしました。するとやはり、「あなたの場合は早産なんてありえない。遠慮なく動きなさい!まあ、するとしたら、500万回に1回くらいじゃないですか」と冗談を言われました。
それからも、安産のために必要な事を色々ときかせて頂き、とても充実した日々を過ごす事が出来ました。その頃には、ヨーガとスクワット300回~500回、2時間~3時間の散歩が、私の日課となっていました。

今思えば、そもそも私は妊娠当初から子宮口が堅いと言われ、難産になる可能性もあるため、ヨーガを始め少しでも体を動かす事を指導されていたのです。それ以降、赤ちゃんは順調に下がってきているものの、運動を続けてもなかなか柔らかくならない子宮口に、もしかして体質のせいもあるのかと悩んだくらいでした。ただ安静にと言われれば、確かに身重な体である妊婦にとっては楽な事に間違いはないのです。しかし、必ずそのつけはお産の時にまわってくるでしょう。私もこの時その指示に従い、安静にしていたら難産になっていたかもしれません。あるいは何らかの医療的処置が必要となったかもしれないのです。同じ状況であっても、先生によって言われる事が全然違う……自分の子供が危険にさらされると知れば、誰だって初めての事だし、お医者さんの言葉を信じてしまいます。そういった意味で怖いと思いました。

いよいよ最後に吉村医院を受診した日、先生に「大丈夫。あなたは絶対に下から産めますよ。日浅先生によろしくね。産まれたら、どんなお産になったのか、私にもちゃんと報告するんですよ」と言われました。いつもはまだ運動が足りないとか、食べすぎだと怒られてばかりだったのに……先生の率直な指導があったから私はここまでこれたんだなという感謝の気持ちと、絶対に自分の納得のいくお産をしてやるんだという気持ちでいっぱいになりました。そして、早産治療薬も飲まず、しかもよく動いても切迫早産さえにもならなかった事と、名古屋のお医者さんの診断との落差に怒りも感じました。

出産のため今治に帰ったのは、臨月に入って間もない頃でした。お産は予定日の2日前、6月6日の朝9:20にそれほど強い陣痛ではなかったのですが、8~10分おきの痛みを感じ、入院する事になりました。それからは安産コースを回ったり、まだそれほど痛くない段階で、看護師さんが持ってきてくれた道具で、さまざまなフリースタイルを試してみました。私の場合、中でも四つん這いが一番楽でした。ひとつの体位でも時期によって感じ方が違ってきますが、この時あらかじめさまざまな体位があるのを知る事が出来たため、実際のお産の時に次々と試す事が出来、すごくためになったと思います。お灸もしましたがこれは思った程熱くなく、特に気持ち良かったのが腰のアロママッサージで、時おりくる陣痛の中でも、リラックスしてうとうととする事が出来る程でした。
夕方には名古屋から主人も駆けつけ、痛みが強くなってからは、緊張をほぐすためにお風呂に入りました。1回目は1人で入りとてもリラックス出来、痛みが少し和らいだような気がしました。2回目は主人に付き添ってもらい、この時は痛みも強くなっていたため、陣痛がくる時には湯船に入って擦ってもらいました。

そうしているうちに子宮口は全開になり、深夜ずっと私を励まし、腰をさすり優しくお産に導いてくださった看護師さんが、「赤ちゃんが生まれますよ!お母さんの胸のボタンをはずしてあげて下さい!」と言われた時は、「あっ、本当にもうすぐ私の赤ちゃんに会えるんだ!」と思いました。生まれる瞬間は痛みもなく、信じられない程自然に出てきたと思います。そして、大きな泣き声とともに温かい赤ちゃんを胸に抱いた時、無事産まれたんだという安堵の気持ちとともに、感動の涙がこぼれました。心から、愛おしいと思ったのです。「写真を!写真を撮って!」という看護師さんの声で、初めて主人がビデオカメラをまわしました。携帯カメラのシャッターをきる母の目にも涙が光っていました。「お父さん、へその緒を切ってください」と言われ、手渡されたはさみでへその緒を切りました。「もうちょっとだから、もうちょっとだからね。頑張れ!」と言いながら必死で腰をさすってくれた主人や、「痛いよね、痛いよね……頑張ろうね」とずっと優しく、私の額の汗をふき取ってくれていた母。生まれたその瞬間の命の誕生を、みんなで喜び合ったこの記憶は、いつまでも忘れる事なく子供に伝えたいと思います。
また、私にここでの出産を薦めたものの、フリースタイルというものも知らないし、最初は「えーここでお産するの?」と言っていた母も、最初から部屋にいると最後まで傍にいるのが自然で、途中で分娩台に移動する方が不自然だった事に気づいたと言っていました。

帝王切開などの医療的処置が増えている昨今、私は自分自身が妊娠し、初めてそのお産方法に疑問をもちました。私が一度だけ受診したその名古屋の病院も、ネット上ではさまざまな事をうたっています。しかし、実際に受診してみて思ったのは、例え選択肢が沢山あっても、本当に大切なのは、事実に基づいたデータや体験談を公開しているかどうかという事です。沢山ある情報に操られてしまわないよう、真実を自分自身の力で見極める力も必要だと感じました。
お産自体については、私は今回が初めてだったため、それを何かと比較する事は出来ません。ただ、今回幸運にも心から信頼出来る2人の先生に巡り会えた事、だからこそ、その指導を守り最後まで自分を信じて努力出来た事。やってだめなら仕方がない。でも、努力しなかったから……と後悔したくなかったから。結果、出来る事はやったという達成感もありました。そして、自分自身の力で赤ちゃんを産むという事。痛くてつらい陣痛を乗り越えた事。その事が、こんなにも自分に自信を与え、子供にこの上ない愛おしさを感じさせるものか。これからお産をする人にも、是非味わってもらいたいと思うのです。

最後に、こんな素晴らしいお産を私たちにくださった先生やスタッフのみなさんに、心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

平成17年7月7日

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