体験談

他院で安静と言われ、吉村医院を受診した体験談

T.C

「おなかがすごく張ってる。このままだと入院、愛媛に帰れなくなるかもしれない。張り止め薬を出すから、8時間ごとに飲んで安静に、散歩もやめる事」
妊娠後期に入ってすぐ、愛知県のある総合病院でそう告げられた。「副作用で動悸や手足のしびれがあるかもしれないが、早産を避けるためだから」えっ、早産?ショックで頭の中が真っ白に。
そんな薬飲んで、赤ちゃんに影響ないはずがない。運動しないと難産になってしまう。その瞬間から、おなかが張る度にドキドキはらはら。不安で他の事が考えられなくなる。

里帰り先の日浅産院に電話して事情を話すと、「岡崎の吉村先生に連絡してあげるから、一度診てもらいなさい」との事。吉村先生は自然なお産の第一人者で、遠方からも受診に来る人がいるという。
早速、岡崎市にある吉村医院に伺うと、「何も問題ない、1時間でも2時間でもどんどん歩きなさい。そんな薬は捨ててしまいなさい。あなたが早産になる確率は何百、何千分の一、安心して」との事。心からほっとした。それから出産の日まで、今まで通り1時間以上の散歩、ヨーガ、安産体操を毎日欠かさず行った。

日浅産院を始めて訪れたのは、その2ヶ月程前、安定期中に愛媛に帰省し、里帰り出産の候補先として受診した折の事。先生は自然なお産のすばらしさについて熱弁をふるってくださった。もともと自然食や自然療法といったものに興味のあった私は、自然の力を信じ、「自然に従う」という生き方そのものを重んじる先生の信念に共鳴。そしてよく動く事も指導された。
その後、師長さんから丁寧な説明を頂き、さまざまな疑問も解消出来た。日浅さんではただ自然に任せるのではなく、必要に応じてきちんと医療対応もしてくれるから安心だ。主人も賛成してくれ、ここでの出産を決意した。

その後、臨月に入って出産のため帰省し、再度日浅産院を訪問。赤ちゃんは多少小さめだが何も問題ない、順調との事。前の総合病院で出された張り止めを飲まなかった事を報告すると、「良かった、本当に良かった」と何度も言ってくださった。
また、総合病院では器具や指で子宮をつついて陣痛を促すときいていたので非常に不安だったが、ここでは体操などを取り入れ、あくまで自然に任せるとの事。安心した。しゃがみ込み運動を1日300回するように言われ、早速実行した。

最後の1ヶ月、こちらでさまざまな体験談を聞き、自信に満ちて活き活きとした先輩方の顔を見ているうちに、「怖い、つらい」と思っていたお産が楽しみにすらなってきた。

そして迎えた出産当日。主人と散歩中、夕方6時前頃から規則的におなかが張るように。痛みはどんどん激しくなり、トイレに行くと「おしるし」らしきピンク色の出血が。病院に電話し、6時40分頃到着。診察のため横になっている間に痛みは治まってしまったが、子宮口は2cm開いているので、そのまま入院する事に。産まれるのは翌日の昼過ぎだろうとの事。7時45分頃から主人とアロマのお風呂に入った。ゆったりするつもりが、8時過ぎから再度陣痛が始まり、みるみる激しい痛みに。立っていられない程の痛みが2~3分おきにくるのを、ヨーガの呼吸法で耐えながら、なんとか体を洗ってお風呂からあがり、入院部屋へ。
2人の看護師さんが足を開いてくれたり、ツボを押してくれたり、つきっきりで痛みを和らげてくれる。「押して欲しい?それとも、さすって欲しい?」と優しくきいてくれ、一番気持ちの良い方法を見つけてくれる。

私のペースでお産が進んでいく。まるで母親に甘える子供のように、心から安心して身を任せ、お産に臨む事が出来た。主人も一緒に乗り切るんだという心意気で、一生懸命私をいたわり、励ましてくれた。
その間、陣痛は急速に強まり、間隔はますます短くなった。激しい痛みに襲われそうになると、ヨーガの呼吸法でリラックスし、全身の力を抜くと、ふわっと痛みが軽くなった。9時過ぎ、激しい陣痛の合間にもまだ余裕があったらしく、メールのやり取りなどしていた程だ。

この時点ではまだ産まれるとは思っていない。一旦主人が水を買いに外に出たが、帰ってきた時には私はもうベッドの上で四つん這いになっていた。看護師さんの「もうすぐですよ」の言葉に、私も主人も唖然となる。「え?嘘でしょう、もう産まれるの?!」看護師さんに促され、ためらいつつも、主人に枕元で手を握ってもらう。
すぐさま、今までにも増して激しい痛み、そして、何かが出てきそうな感覚。看護師さんの「カンガルーケアの用意を」という言葉を夢見心地にききながら、主人の手を握り締める。
まさに産まれる5分前に母が到着。最も激しい陣痛が2回きて、何かが出てくる感覚があり、力の限りいきみつつ、思わず「痛い~!」と叫んでいた。
私はヨーガの猫の姿勢になって、主人の手をしっかりと握り、9時30分、ついに赤ちゃんの頭が。仰向けになり、赤ちゃんを胸に乗せてもらった。9ヶ月間ずっとおなかの中にいて、初めて会った赤ちゃん。「可愛い!……無事産まれてきてくれてありがとう」主人も母も泣いていた。

その後主人は毎日のように、オムツを換えたり寝かしつけたり、積極的に育児を手伝ってくれている。「あの光景は一生忘れないよ、本当にありがとう」と。

看護師さんたちのあの励ましと絶え間ないケア、そして、自分のペースで全て運んで良いというあの自由さが無かったとしたら、とてもあのようにスムーズには乗り切れなかったのではないか。昔ながらの、自然の流れに任せた完全にリラックスしたお産では、痛みを和らげるホルモンが分泌されたり、大量出血を防ぐなどの自己防衛システムが働いたり、まだ医学で解明されてないさまざまな力が働くという。今回のように四つん這いになれば、重力の力も借りられる。

ところが現在の日本では、安易に薬や器具に頼る技術偏重型の産科医療が横行している。そういうお産では自然な力は働かない。妊娠中に運動せずに骨盤が開いてない状態で、自然の力に逆らい、分娩台の上で薬や器具を使って無理矢理引っ張り出すのだから、すごく痛いし危険度も増すだろう。「あの痛みはもう二度とごめん、2人目は考えられない」と若いお母さんたちが言うのをきくと、本当に残念に思う。過剰に医療介入された現代のお産が、昨今危惧される少子化の一因になってはいないだろうか。

女性にとって、お産は特別なイベント、誰もが大切にしたいと思っているはずだ。本来、お産は赤ちゃんとの共同作業。赤ちゃんだって、お母さんを助けるために頭の形を変えたり肩をずらしたりしながら、懸命にお母さんを助けてくれる。そんな体験を通して、赤ちゃんへの愛情も自然に芽生える。産まれてきた赤ちゃんに思わず「ありがとう」と言った私。「私のおかげでこの子が産まれてきた」というよりも、「この子のおかげで今の私がある」という思いでいっぱいだからだ。
そんな感動を与えてくださる先生方と巡り合えた事、心から幸せに思う。

吉村先生、日浅先生、師長さん、担当の看護師さん、スタッフのみなさん、本当にありがとうございました。

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