体験談

前回は深い会陰の傷で苦しんだ

S・F

今回2人目を日浅産婦人科で出産しました。1人目は別の病院で分娩台でのお産でした。1人目の時は主人の転勤で九州に行ったばかりで知人もいない状態でしたので、妊娠したのをきっかけに友人が出来るかも……と楽しみにしていましたが、最初にかかった病院の先生に不安を感じる事があり、途中で違う産院に変わりました。その産院では、マタニティービクスをしていたのでさっそく1回目参加し、大満足したのもつかの間、帰りに受付の人に呼び止められ、「里帰りの方は参加出来ない事になっていましたので、次回からは参加しないでください」と言われものすごく落ち込みました。

一般でやっているマタニティービクスやマタニティースイミングも色々探しましたが見つからず、結局、産院からの安産指導もない状態でした。精神的にも不安だったからかつわりもひどかったです。

今治に里帰りして間もなくおなかの張りがあり、切迫早産になるという事で2週間あまり入院し、点滴をしました。入院していたために母親学級に参加しそびれ、退院後散歩しなさいというだけで安産の指導も無く、出産の日を迎える事となりました。

内診の時に産道が硬いと言われましたが、どうすれば良いのかその指導もなく、「赤ちゃんの頭も大きいので予定日も違うかもしれない」とも言われ、不安でした。早く産まないと赤ちゃんが大きくなってお産が大変になるという事で必死で歩いたのを覚えています。

39週になっておしるしがあり、陣痛もあったので入院となりましたが、夜は完全看護という事で陣痛がありましたが、付き添ってくれていた母は帰らされ、痛みが我慢出来なくなったらナースコールを押してくださいと言われ、ナースコールを押すと看護師さんが来て腰をさすってくれるのですが、陣痛の合間にはいなくなるので、何度も自分で押さなくてはならず、痛みと不安と疲れでとてもしんどかったです。ですから完全看護とは何だったのかと疑問に思います。お産は微弱陣痛で子宮口もなかなか開かず、分娩所要時間は74時間となりました。
分娩台でのお産は大きなライトの下でおなかはベルトを巻き、手には点滴、手足は縛られるといった状態でした。とても怖くて不安でした。最後は赤ちゃんの心音が下がり吸引分娩となりました。でも、それが普通なのだと思っていました。
今回5年ぶりに2人目を出産しました。数年前から義妹が日浅産婦人科で働いている事もあり、次は日浅産婦人科で産もうと決めていました。
お盆や正月などで里帰りした際に「フリースタイルで出産する」とか、「お部屋で出産する」とか色々きいてはいましたが、いまひとつピンとこず、逆に、「お部屋でお産」という事に対して違和感を感じた程でした。

前回の出産では産道が大きく切れて、歩くのも座るのも大変で、トイレに行くのも手摺りを持ち、人に支えられて行っていました。看護師さんからは「まだ座れないの?」と言われつらかった事を覚えています。産後も1ヶ月は痛みで苦しみました。だから、義妹の話の中で「看護師さんがみんな優しい」とか、「ここまでするのか……と思う程してもらえて、出産する人は良いと思う」という言葉がずっと頭に残っていました。

だから、次のお産は日浅産婦人科で産もうと決めていました。今回は32週まで仕事をしていたため、今治に帰って来たのが34週の時でした。
しかし、院長先生も看護師さんたちも快く迎えてくれました。初めての診察で内診した時先生が「前回のお産の傷が深く残っているけど、これは痛かったでしょう……。大変だったね」と言ってくれました。その時は涙が出てきそうでした。

日浅産婦人科では、マタニティー・ヨーガや安産コース、母親学級、ミニセミナーなどがあり、私の場合、出産までに時間がない……と思い、出席出来るものは全部出ようと決めていました。前回よりも楽なお産をしたい!その一心でした。

それにしても本当に驚きの連続でした。ヨーガでは硬くなっていた体が軟らかくなり、ゆっくりと自分のペースで呼吸しながら出来るのでとても気持ち良く、途中何度もあくびをしてしまうくらいリラックスする事が出来ました。1人でも出来るので覚えた事を自宅でもやり、腰痛や肩こりが気がついた時には無くなっていました。

ヨーガの後、ハーブティーを飲みながら、自己紹介や看護師さんに質問などをしたり、色々な情報を教えてもらったりと、プラスアルファの部分がすごく良かったです。
特に出産を終えた人の体験談は驚きでした。私に言わせれば、ものすごい安産なのです。産後まだ時間もそう経ってないのに普通にケロッと座っているのです。何人もの体験談をききましたが、みんな本当に満足そうで、安産でとても勇気づけられました。

2人目は予定日より4日遅れの出産となりました。おしるしがあり、陣痛もあったので主人と病院へ行きました。家を出た時、ものすごい雪で、その日に九州へ帰る予定だった主人も病院に一緒に泊まる事になり、立会い拒否だったのが、立ち会う事となり約9時間後出産しました。
入院後すぐ安産コースをし、お風呂で1時間程ゆっくりつかりました。入浴中はなぜか陣痛が消え、ものすごくリラックス出来て気持ち良かったです。入浴後、陣痛が強くなり、足にお灸を貼ってもらったり、ずっと背中や腰をさすってくれたり、陣痛の合間の痛くない時もずっとで「申し訳ない」と言うと「みんなにしている事だから気にしないで」と言われました。
子宮口がまだ3cmしか開いていないので、更に陣痛を促すため、2度目の入浴となりました。この時は入浴中も陣痛があり、湯につかったままで腰をさすってくれたり、肩にお湯を掛けたりしてくれました。湯から出ると、陣痛が一段と強くなり、洗い場にしゃがみ込んでしまう程でした。
なんとか部屋に戻り、強い陣痛が何度かあった後、子宮口が8cmになっていて、それからは早かったです。フリースタイルのお産という事で私がとったのは四つん這いでした。色々試してみたのですが、足元が堅い方が踏ん張れるし、楽だったので、看護師さんにわがままを言ってベッドの横の床で四つん這いになりました。「頭が見えているよ」と言われた時、本当に髪があたっていると感じ、ずるずると赤ちゃんが出てきたのも感じとれました。

前回は吸引分娩だったので出してもらった感じでしたが、今回は自分で産んだんだと実感しました。産まれてすぐ、へその緒がついたままポンと胸の上に赤ちゃんが置かれ、「はい!これがカンカルーケアーだよ」と先生が言いました。産まれたばかりの赤ちゃんはとても温かく、その温もりを今でも覚えています。主人がへその緒を切ってくれ、本当にいいお産が出来て良かったです。

フリースタイルだと陣痛の痛さを自分が楽になる姿勢で逃す事が出来、その状態で産む事が出来、とても良かったです。前回の傷が裂けたけれど、産後の回復も早く私にはとても安産でした。
そのため、母乳の出も良く、母子同室を希望しました。入院中に赤ちゃんの世話をしていたためリズムがわかるようになった状態で退院する事が出来ました。おかげで子供が可愛くて仕方ありません。以前の出産では、自分自身も、病院や先生が産ませてくれると思っていたような気がします。
今回、日浅産婦人科で色々なものに出席していくうち、お産は自分がするもので、どういうお産にするか自分で決める事が出来るんだとわかり、自分事としてとらえる事が出来、色々な情報が得る事が出来たため、不安がどんどん無くなりました。
義妹もずっと付いていてくれ、本当に心強く、師長さんはじめ看護師さんには産後も赤ちゃんの世話や母乳の事等、相談にのって頂きました。母も「最初から、ここにすれば良かったね」と言っています。
安心した状態でお産に望む事が出来、先生や看護師のみなさんには本当に感謝しています。ありがとうございました。

【院長のコメント】
非自然出産による不必要な医療的介入によって生じる産婦のいわれなき苦しみ(被害)の1つに、このSさんのように大きな会陰切開や会陰裂傷による長期間の傷の痛みがあります。これは分娩台に乗せられて発生する児心音の低下によるもので、それは放置出来ないのでここでは吸引分娩が早期になされ、必然的に傷の程度が深くなるわけです。その他にも吸引分娩によって発生するトラブルは、膣壁血腫が出来たり、出血が多くなったりします。

場合により、稀ではあるが自院の手に負えなくなり、母体転送が必要になったりするわけです。自然出産でもこのような事が起こり得ますが、重症の発生頻度は十分の一くらいに減少します。その理由は、吸引分娩の頻度が三分の一に減少し、もし吸引分娩になっても児頭がよく下がっているので、産婦に与える損傷は小さくなるからです。
また非自然出産による被害は、微弱陣痛における陣痛促進剤の投与、および適応不明の分娩誘発から発生しています。これらは産婦に塗炭の苦しみを与えるものの、多くの場合は重大な結末にはいたらず、多くの産婦にお産とはこんなものというように納得させてしまいます。また多くの産科医はこの産婦の叫びに気づいていない現実があり、改めて非自然出産の罪深さを実感します。
私は自然出産の到来を望んでいますが、何よりも早く産科教育の出発点から自然出産が指導されるよう心より願いながら、私の立場で微力を注いでいる毎日であります。

それと、もう1つ問題なのはこのSさんのような、医師による切迫早産の診断と点滴も伴った2週間の入院です。なぜそのように重症な産婦さんが吸引分娩となり、しかもそんなに重症な裂傷になるのでしょうか。まずこういう事は起こりません。切迫早産は患者にはわかりにくい病気であり、診断に対して患者さんは疑問を抱きにくいのです。切迫早産という医療(病気)の世界に引きずりこまれると、早産をしてはいけない気持ちが心を支配してしまい、まさか自分が難産とか帝王切開になるとは思いがいたらない。同時に、セカンドオピニオンも考え付かないのでしょう。
これに関しては、当院への里帰りの産婦さんを見てもその傾向は頻繁にみられます。里帰り初産婦さんの内、安産指導を受けている方はほとんどいなく、6割は早産止めの薬をもらっているか安静安静の指示です。今日からめちゃくちゃ動いてください、と言うと戸惑うのは当然です。このように、不思議ではありますが、ほとんどの産婦さんが安産の指導を受けていないのが実情であり、それだけでも難産や帝王切開が増えるのも当然のことなのです。
とにかく、お産の経験者が今のお産の間違ったところについて声をあげなければ、今のお産は改善されません。産婦が動かなければ、「今のお産に異議なし」とみなされるのです。

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