体験談

初産婦の逆子でも無事産めた

A.M

師長: 今日はみなさんの中には顔見知りの方もいらっしゃると思いますが、Aさんはずっと逆子が治らないという事でしたが、先週のヨーガの教室で「絶対下から産みます・・・・・・」とおっしゃっていて、今回はその報告も兼ねて体験談をお願いしました。
では、まず当院で出産しようと思ったきっかけからお願いします。

Aさん: 友人や知り合いの人にフリースタイルが出来るとか、分娩台に乗らなくても出産出来るとか聞いていたので、絶対ここで出産しようと思っていました。

師長: では妊娠初期からフリースタイルが良いとか、分娩台じゃない方がいいとかは何となく思っていたんですか?

Aさん: 分娩台は絶対嫌だったんで……。

師長: それはどうしてですか?

Aさん: 乗った事が無かったのもあるんですが、テレビで観ててつらそうな感じがしたので、もっと自由にしたいなと思いました。

師長: では実際当院に来られて、フリースタイルの話とか安産の話とかきいてもらったと思いますが、印象としてはどうでしたか?

Aさん: 受け入れ易く、自分がしたい出産が出来そうな感じでした。

師長: 逆子になったのはいつ頃でしたか?もうずっと治らないって言っていたんですよね。

Aさん: 29週くらい……

師長: そうですね、29週くらいからずっと逆子で体操とかあらゆる事をしたんですよね……。でも治らなくて。
具体的にどんな事をしたのか覚えてますか?

Aさん: 逆子体操やお尻を振ったり、足を高く上げて主人に振ってもらったり、お灸……全部しました。

師長: それでも一回も治らなかったんですよね。
それで、逆子の場合、下から産むかどうかという事にあたって、先生から日頃からの安産指導がもちろんあったと思います。おそらく、逆子という事で、頭位の方よりその指導が余分にあったと思いますが、どのような事を言われましたか?

Aさん: 沢山歩く事と、スクワットが最終的に1280回。

師長: 散歩は何時間くらい?

Aさん: 2時間くらい。

師長: 何週くらいから始めましたか?

Aさん: 逆子になる前からしていたんですが、逆子になってから2時間していました。

師長: 10ヶ月に入る前くらいに先生からこのまま逆子だったらどうするか、という具体的な方針の話があったと思いますが、ご主人と一緒に聞かれて、色々葛藤はあったと思いますが、どんな話し合いをされたんですか?

Aさん: 1回も帝王切開しようという話はなくて、結構主人が手伝ってくれたので絶対下から産もうと言う事だけでした。

師長: 周りでは逆子の場合は帝王切開という方針のところが多いと思いますが、家族の方はどう思われていましたか?

Aさん: 友達とか、親とかはもう切って楽なら切ってもらえという人が多かったです。

師長: ご主人は?

Aさん: おそらく私の意志が強かったので、何も言わなかったです。

師長: それで、より協力もしてくれたんですね。
実は余談ですが、1回帝王切開の話も私が持ち出した事があって、赤ちゃんも大きいし、38週の後半、予定日の約1週間前くらいでそれまで待って、陣痛がこなければ10日の帝王切開も視野に入れてもいいのではないかとお話させて頂いたのですが、でもご本人とご主人が相談して、下から行きますという事で帝王切開の話は白紙になりました。でも赤ちゃんはその10日に産まれてきてくれたんですよね。きっとおなかの中で話を聞いていたんでしょうね。

お産の具体的な話になりますが、入院が9日の夜中の3時55分、破水から始まって入院されたのですが、子宮の出口はひと指挿入、指が1本入るくらいでした。お尻の方もすごく下がっているっていう感じでも無く、ほどほどというくらいでした。破水しているので感染予防の抗生物質の点滴をして、陣痛がくるのを待っていたんですが、その日はそんなに強い陣痛ではなかったんですね。でも陣痛はきて欲しいので破水しているからと言って安静にするのではなく、色々動いてはいてもらったと思います。入院して痛みがくる間、どんな事をしましたか?

Aさん: 安産コースを回ったり、部屋でバランスボールを使ってスクワットをしたりしました。

師長: 陣痛が始まりだして、スクワットをするのはしんどい場合がありますので、病院では、バランスボールを使うと少し弾みがついて楽に出来るので、このような物も使っています。破水しているという事もあったので、ご主人とか心配されたりしませんでしたか?

Aさん: しました。まさか自分が破水して10日も早く入院するとも思わなかったのでかなり焦りました。

師長: でも、急激な痛みではなく、ゆっくりと家族の方とかスタッフとも話す機会もあったりして、その面では、少しずつ落ち着く事が出来て良かったのではないですか?
こちらとしては破水もしているし、感染の兆候があれば、逆子という事もあって帝王切開という事も視野に入れながら様子を見ましたが、少しずつ微弱陣痛で開き始めて朝には3cmまで開きました。そして、普段は刺激したり、陣痛の増強はしないのですが、破水もしていましたので、強い陣痛を付けるのではなく、少し刺激をするという事で少しだけ張りを強めるお薬を飲んで頂きました。
その薬を2回のんで頂いたのですが、それで徐々に痛みがついてきてお昼には5~6cmになりました。その頃までは自分で好きな格好をして頂いていたんですが、主には横になる事が多かったですか?

Aさん: 安産コースをする以外は横になる事が多かったです。

師長: 薬を2回飲んだ後、3回目はどうしようかと思っていましたら、痛みも強くなり、5分おきに陣痛がきていたのでそのまま自然のリズムをみる事にしました。痛いながらも四つん這いになったりしたんですが、四つん這いになったとたん痛みが更に強くなり、よく潮の満ち引きの話をきいた事があると思いますが、丁度その頃から潮が変わって満ち始めたんです。そのためか、痛みもどんどん強くなり、4~5分置きで間隔は変わらないですが痛み自体は声がでるくらい強くなりました。そのくらいからかなりつらかったと思いますが、つらいながらも色々な体位を変えたと思いますが、どの体位が楽とか、しんどいとかまた、こんな事がしたいとかわかりましたか?

Aさん: ヨーガをしていたから無意識で四つん這いになったり、ネコのポーズをしたりする事が出来たのだと思います。

師長: 痛いながらもヨーガをしていて良かったって言っていたのを覚えてますか?

Aさん: 覚えてない……。

師長: お母さんが呼吸が上手だと言っていましたが、ヨーガをしていたお陰かも知れないですね。こういう事は頭で覚えてするのではなくて、ヨーガも熱心にされていたのでおそらく自然に身体も動いたのだろうし、呼吸も考えなくても出来ていたんだろうなと思います。
夜の8時に全開になり、痛みも2~3分おきにきていました。

本来はフリースタイルでお部屋でお産をするのですが、逆子さんの場合は処置が必要な場合もありますので、分娩室の方に移動して頂いています。そして直前までは用意してあるマットの上で横向きになっていました。でもどうしても、赤ちゃんが出る時は先生が赤ちゃんが出るお手伝いをいないといけないので上を向いて頂きましが、最後まで横を向いたままでいたかったという思いはありましたか?

Aさん: ありました。上向きはすごくしんどかった。

院長: 分娩台は使わなかったよね。

師長: そう考えたら、頭位でもそうですが、分娩台にあがって体を固定してお産するのはどうでしょうか?

Aさん: 絶対無理です。

師長: 最終的には上向きでも、直前までフリースタイルが出来るというのは妊婦さんにとってはいい事ではないかと思います。
先生が言われたように、分娩台は診察以外使いません。15cmくらいの高さのマットでお産をします。みなさん、高いところにあがるのはそれだけでも恐怖感があります。ちょっと動いたら落ちそうというのもあるし、緊張感が増すように思います。
ご主人がずっと付き添ってくれて、どうでしたか?

Aさん: 立ち会いに関して、私はあまりしたいというのも無く、タイミングが合えばというくらいだったんですが、でもいてもらったら手とか握っていてくれて気持ちも楽になるし、立会いは絶対した方がいいと思いました。

師長: ご主人も一睡もせず、ずっと付き添ってお世話してくれて、本当に2人で赤ちゃんを迎えたという感じでいいお産だったと思います。
逆子の場合、無条件で帝王切開になる事もありますが、実際自分が努力して、自分で産むという意思をもって望んだ結果、経膣分娩出来たという事に関してどう思いますか?

Aさん: 友達とかは逆子だと帝王切開と思う人が多くて、産まれたと言ったら帝王切開だと思われたり、自然分娩言ったら驚かれたり、自然分娩出来るなんて初めて聞いたと言われたりしました。
でも、絶対するべき事をして、頑張れば初産婦さんでも逆子のままでも産めると思います。

師長: これも無条件ではなくて、まず自分で産もうという強い気持ちを持って、そしてそのためにはどうしたら産めるかという情報を誰かから得ないと、ただ動きなさいのひと言だけでは、スクワットや散歩も思いつかないかもしれないし、具体的な個々の安産指導がないと難しいと思います。
ご主人さんが、この子が下から産まれたのは奇跡だとおっしゃってましたが、でも運だけでなく、本人さんの頑張りの賜物だと思います。最後にアドバイスをお願いしたいのですが。

Aさん: 妊娠中はしんどくても、先生の言われるように散歩をしたりスクワットをした方がいいし、ヨーガも出来るだけ来た方が良いと思います。陣痛中はあまり意識はないのですが、自分が楽な格好を探しながら、息をなるべく長く吐くとか、ヨーガの時こんな事を言っていたなと無意識のうちに思い出してきます。赤ちゃんを信じて頑張ってください。

師長: 陣痛の時は自分の本能のままに声をだしてもいいし、したくない事、つらい事は言って頂いたら、また違う事を一緒に探し、提案していきますので、何なりと言って下さい。院長、何かコメントを。

院長: 厳しい条件の中でよく頑張りましたが、なんと言っても本人がお産に目覚めていたというのが最大の勝因でしょう。逆子というのは初めからあるのではなく、8~9ヶ月頃にわかってくるものです。ですから、妊娠の4ヶ月頃からは、将来頭位であっても何が起こっても安産出来るように安産指導を受け、そしてその運動や散歩をしっかりと日々行う事が大切です。他にも逆子だけでなく、児が大きいとか、妊娠中毒症や糖尿病が妊娠後半期に発生する事もあるわけで、その場合は安産運動をしていなければ帝王切開の可能性が大きくなるのは当然です。

ですから、単に日浅産婦人科に行けば安産出来るというのは大いなる誤りである事がおわかりになると思います。Aさんは素晴らしい方でしたが、今の産婦さんはお産にもっと真剣にとりくんで頂きたいと願っています。また、当然ながら帝王切開はオールマイティーでありません。重大な合併症は稀ですがあるのも事実ですから、帝王切開を安易に考えてはいけません。 

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